米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)の名護市辺野古への移設をめぐる安倍晋三政権と
翁長雄志(おなが・たけし)沖縄県知事(64)の亀裂は、いまだ深いままにある。翁長氏は安倍首相
(60)や、沖縄基地負担軽減担当の菅義偉(すが・よしひで)官房長官(66)との面会を模索する
が、2人は応じようとしない。仲井真弘多前知事(75)とは蜜月関係を築いていた官邸側は、翁長氏
の政治手法に強く不満だからだ。
地元紙はこぞって「沖縄冷遇」
2015(平成27)年度予算案が閣議決定された14日夕、翁長氏は知事就任後、初めて首相官邸
に足を踏み入れた。会談相手は事務方トップで政府の沖縄連絡室長を兼ねる杉田和博官房副長官(73)。
首相や菅氏ではなかった。
「私も選挙で訴えてきたことがあるので…」
翁長氏は、政府が5年ぶりの減額となりつつも、3339億円の沖縄振興予算を計上したことに謝意
を示した。同時に、辺野古移設に反対して当選したことを強調することも忘れなかった。杉田氏は
「機会を設けて真摯(しんし)に意見交換しましょう」と引き取り、会談は終わった。会談時間は10
分程度だった。
翁長氏が知事として上京するのは、これで3回目。閣僚では山口俊一沖縄北方担当相が面会に応じて
いるが、首相サイドは翁長氏との話し合いは「事務的にやるしかないので、事務方が応対すればよい」
というスタンスを取っている。
これに対し、沖縄の地元2紙は社説で政権の姿勢を激しく非難する。 (略)
ちなみに、菅氏は一昨年4月、沖縄2紙を含む地元のメディアを個別訪問した。安倍政権への理解を
得るねらいがあったが、現状を見ると成果はないといわざるをえない。 (略)
座しているだけか
官邸サイドの翁長氏への不満はそれだけではない。辺野古移設に反対といいながら、普天間の危険性
除去についての言及を避けている。
菅氏は、昨年の県知事選の前から「どういう形で危険除去をするのか県民に説明する義務が当然ある」
と翁長氏を批判していた。今月9日のBSフジ番組では翁長氏と会うタイミングについて「政治判断が
必要なときは会わなければまずいと思うが、今はまだその段階ではない」と語った。「危険性除去」の
回答を出すのが前提という立場だ。しかし、菅氏らのこうした態度はいつまで続けられるか。
また、政府は仲井真氏の埋め立て承認を受けて、辺野古移設に向けた工事を粛々と進めることにして
いる。だが、翁長氏らが反対する工事を進めれば、反対派が勢いづき、工事への妨害活動が激化する可
能性がある。
15年度予算案の沖縄振興関係費は当初、1割程度の削減が検討されていたが、最終的には4.6%
減にとどまった。政府筋が「知事と官邸が反対を向いていても解決しない」と指摘するように、普天間
問題を進展させる上で、翁長氏との関係を放置できないのは事実だ。また、翁長氏はかつて、自民党沖
縄県連幹事長だった。
官邸サイドは、翁長氏に強く出られない苦悩と、同氏の「転向」への期待が交錯している。要は翁長
氏の真意を測れずにいるのだ。官邸サイドが沖縄に足を運ばないと進展は期待できないのか。逆に反対
派を勢いづかせ、膠着(こうちゃく)するリスクもある。沖縄問題の司令塔を担う菅氏は、ただ座して
いるだけではないだろうが…。(政治部 峯匡孝)
全文 産経ニュース
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