健康志向などを背景に、衰える気配のない「朝食ビジネス」。コンビニエンスストアやファストフード店が需要開拓を進める一方で、
ホテルでも朝食を充実させる動きが目立ってきた。旅行関連サイトでは味や品ぞろえを競う宿泊施設のランキングが注目を集めており、
「宿泊稼働率や客単価アップにつながる」(業界関係者)という。ホテルの“朝食バトル”が熱を帯びている。
■高級感で勝負
「朝食はホテル選びの大きな基準になっている」と、旅行口コミサイトを運営する「トリップアドバイザー」広報の東真菜さんは話す。
近年、ホテルの朝食に関する口コミが多数投稿されるようになったことなどを受け、同社は平成22年から年に1回、朝食のランキングを
発表している。朝食は今やホテルにとって「料飲部門の売り上げを伸ばす以上に、宿泊客を呼び込む重要な要素だ」という。
高級感を出そうと各社がこぞって強化するのは食材の質や料理の品ぞろえだ。
リーガロイヤルホテル(大阪市北区)がこだわるのは、自家精米のごはんや、京都の老舗店と国内の契約農家から取り寄せたみそや
野菜など食材だ。これが効果を生み、4月に発表されたトリップアドバイザーのランキングでは、昨年の15位から今年の7位へ急上昇した。
■多彩、地産地消
ホテルニューオータニ大阪(同市中央区)は昨年9月、100種類以上の料理を提供する「最強の朝食」を打ち出した。メニューは和洋と
いう施設が多い中、点心など中華を投入。その場でゆで上げる讃岐うどんなど、グルメ志向のメニューも魅力だ。
「一度に食べきれないほどの品数だからこそ、次にまた泊まって楽しみたいという動機につながっている」と、高山剛和副総支配人は
自信を深める。来年には屋外プールを生かし「プールサイドで味わうスイートルーム宿泊客専用のものも始めたい」と、プレミアム朝食の
構想も明かす。朝食の高級化は他施設でも広がっており、ホテル日航大阪(同市中央区)も昨秋、1食5200円(サービス料別)の
「プレミアム和朝食」を発売した。
ホテルラ・スイート神戸ハーバーランド(神戸市中央区)も朝食で一目置かれる存在だ。宿泊予約サイト「楽天トラベル」に登録している
ホテルや旅館から約千施設が出場した「朝ごはんフェスティバル2014」では、西日本大会で優勝し、今月2日の全国大会で準優勝。
食材の6~7割が兵庫県産という地産地消の料理が特徴で、1年を通して地元の旬を味わえると評判を呼んでいる。
■潜在市場は1・7兆円
朝食の質向上は客の呼び込みだけでなく、客単価を伸ばす効果も生む。そのため、各ホテルでは朝食をとる宿泊客の割合を重視する
向きが強まっている。
ホテルニューオータニ大阪では24年の約40%から現在は50%弱まで上昇。ホテルラ・スイート神戸ハーバーランドは20年の開業
以来、朝食の内容を継続的に強化しており、約90%という高水準だ。
農林水産省の試算によると、朝食を食べない人は日本人口の約12%。これを潜在的な市場として見た場合、1食300円で換算しても
年間56億食、約1兆7千億円に上る。朝食はホテルや旅館にとって、集客力を高める成長ドライバーとしての大きな可能性を秘めている。
ソース(MSN産経ニュース)
http://sankei.jp.msn.com/west/west_economy/news/140911/wec14091107000001-n1.htm 写真=100種以上のメニューが並ぶホテルニューオータニ大阪の「最強の朝食」