「新型デミオは、CX-5以降の新世代商品に採用してきた新しいマツダの技術とデザインの考え方のすべてを
コンパクトなボディに凝縮させることを目指した。コンパクトカーのクラス概念を打破する」
マツダは9月11日、7年ぶりに全面改良した新型「デミオ」の発表会を東京・六本木の東京ミッドタウンで開催した。
その冒頭の挨拶で小飼雅道社長はこう強調した。
文字通り、新型デミオはマツダにとって自信作だ。低燃費エンジンなど同社の環境技術「スカイアクティブ」を
初めて全面的に採用し、小型車として国内初となるディーゼル車を投入した。
燃費も軽油1リットル当たり最大30キロメートルと、軽自動車とハイブリッド車以外のエンジン搭載車で国内最高水準に高めた。
デザインは車に躍動感を与えるため、流れるような形にし、後部座席や荷室の空間をあえて犠牲にして
ボンネットを長く取ったスポーティな外形を採用。
フロントグリルは2012年以降の車に採用しているマツダの統一デザインにして、「アテンザ」や「アクセラ」と
共通のイメージをつくり出した。この結果、一目で新型デミオはマツダの車とわかるようになった。
また、コンパクトカーが苦手としている長距離ドライブに関わる性能も向上したという。
「コンパクトカーは通常、市街地走行をメーンに考えられるが、われわれはコンパクトカーでもドライビングの楽しさを
味わってもらい、どこまでも遠くに走ってもらいたいという思いを込めて、足元のペダルのレイアウトなど長距離ドライブ
しても疲れないためのさまざまな改良を行った」と開発担当の土井歩主査は説明する。
売り方についても見直す。旧型デミオは性能やデザインは良かったが、量を稼ぐために“安売りしている車”
というイメージがぬぐえなかった。
その裏にはライバル車である「ヴィッツ」(トヨタ自動車)や「フィット」(ホンダ)、「ノート」(日産自動車)の存在があり、
価格を抑えて販売する必要があった。新型デミオでは、それらの車よりもむしろVW「ポロ」やBMW「ミニ」を意識し、
価格もガソリン車の約135万円からディーゼル車の約219万円と、コンパクトカーでは高めの設定を行った。
「マツダは今、ブランド価値経営を目指しているが、その一つの大きな施策が正価販売。今回の新型デミオは
国内における最量販車種なので、この車でも、これまで新世代商品の中で培ってきた正価販売を実現すべく、
またこれを実現すればマツダは大きく変わったなと言えるのではないかという覚悟を持って臨んでいる」と
稲本信秀取締役専務執行役員は話す。
この裏には苦い経験があった。マツダは技術力やスポーティな車づくりには定評があるものの、販売力の弱さから
大幅値引きやレンタカー用などでの販売量確保を繰り返し、結果的にブランドイメージの低下を招いていた。
収益も当然悪化し、国内自動車メーカーとしては最低とも言える営業利益率しか確保できず、円高になる度に赤字に陥っていた。
今その体質からの脱却を図っており、その最大のテーマが正価販売なのだ。幸い、これまで投入した
「CX-5」「アテンザ」「アクセラ」と成功している。しかも、どの車種も売れ筋は最高グレードだという。
その結果、収益力も大きく向上した。「新型デミオでも同じような傾向になることを期待している」とは
原田裕司取締役専務執行役員の弁だが、プレミアムブランドを目指すマツダにとって、新型デミオはその試金石と言える。
http://www.sankeibiz.jp/business/news/141011/bsa1410111712001-n1.htm